月に囚われた男

月に囚われた男


を見ました。


ストーリーとしては、
設定は近未来。

月に3年間の単身赴任をしている男サムの話。
月の基地には男だけ、話し相手は人工知能のガーディだけ。
なぜか無線は地球に飛ばない。でも契約はあと2週間。


月に行っている男が、地球に恋い焦がれながら、月で作業する。
そんな中、事故にあう。


そこで、起こされる。
サムはなんとなく奇妙に思い、外に出ると、もう一人のサムが事故にあっていることが分かる。


そう実は、クローンだった。
しかも、2人とも。


サムが事故にあってから、起こされたほうのサムはクローンの予備が起きただけなのだ。


よく探索してみると、地下室があり、大量のサムのクローンがいた。
月を探索すると、妨害電波が出ている塔を見つける。



救助船が来ることになっていた。
最初に出たサムが事故ったから。
2人が一緒にいるところが見られたらまずい。
1人は地球に先にカプセルで脱出することを考え、1人は救助船に乗って地球に乗ることを考えた。
しかし、そうなると事故車に死体がないのはまずい。
起きたほうのサムは、もう一人のクローンを起こして、殺して事故車に放置することを考え、実際に起こした。
しかし、事故にあったほうのサムはもう弱り切っていた。
「俺たちには人は殺せない」


そういいながら、弱ったサムが自ら事故車に向かっていく。
次に起きたほうのサムは、カプセルで地球に脱出する…


というお話。


ハッピーエンドで終わるアメリカ的な映画だった。


印象的だったのは、事故ったサムが何かを不審に思い、
会社のデータベースにアクセスしようとしたときに、パスワードがかかっていて見られなかった。
そこに、ガーディがやってきて、パスワードを教えてあげるシーン。


人工知能が「やさしさ」を発揮する。
この構図だと、人工知能は会社側なのだ。
しかし、自分がクローンであると悟ったサムに対する同情が発生する。


さらに、後に起きたサムが、地球に脱出しようとするとき、
ガーディは「僕の記憶を消してくれ」と言う。
メモリを覗かれると、確実にサムは消されてしまう。
さらに、そこにサムが「いいのか?」と聞く。
ガーディは「いいんだ、君を守るのが僕の使命だ」と答えるシーン。


会社が管理のために作った人工知能が、同情してしまう。
同情という感情をもった人工知能
そこに、サムが悲しむシーン。
人工知能といえども、「情」が発生し、そこをいとおしく思うような描画のされかただった。


クローンで増殖されたもの以外にも、
人工知能という簡単に複製可能なものが、人間らしいふるまいをして、
そこに交流があるというのは、面白い設定であったと思う。
生かしきる腕力があんまり監督になかった気がするけど笑。


クローンが、最初は自分がクローンだと思わないところが興味深い。
人工知能は自分が人工知能であることを知っている。
でも、両方とも、会社が勝手に「複製」したものだ。
そういう束縛の中で、互いに情が発生しあうところをきちんと描けばもっと面白い映画になったんじゃないかな、って思ったり。


他には、「孤独」というのが結構上手に描かれていた気がした。
ずっと一人で気が狂いそうになっていた事故にあったサム。
ずっと地球に残してきた奥さんと赤ん坊の娘のことが気になっていた。


無線防御区域の外に出て、地球と通信してみたら、
奥さんは死んでいた。
娘は赤ん坊でもなく、もう15歳。
さらに娘はこういう。
「お父さん、お母さんについて電話だよ。」


そう、赤ん坊の娘の記憶は、オリジナルのサムの記憶の複製だったのだ。
しかも、かなり前の。
そして、地球にはオリジナルのサムがいる。
これをしった事故にあったサムが、自暴自棄に出るシーンが印象的だった。



最後は、ハッピーエンドでした。
道徳的には「産業のためのクローンよくない」というのが思想の根底に無意識に流れている。
別にそのステートメント自体が悪いものだとは思わないけれど、
創造者としては、そういう無意識の仮定、常識をどこまであぶりだせるかが勝負な気がしたこの映画でした。