独立でも同分布でもない確率変数の和に対する数値実験

独立同分布の確率変数の和は,極限かますと,
元の分布の平均μ,分散σの正規分布になることは中心極限定理としてよく知られた事実.


だけど,独立でも同分布でもない確率変数の和にどうアプローチしていこう,
というのが今回の趣旨.


まず,なんでこんなことを考えたか.

問題が解けない.

ひとえにコレ.

X_{j}は標準正規分布N(0,1)に従うとして,

 \displaystyle A_{1}=0\\ A_{k}= \frac{1}{k^2}\sum_{s=1}^{k-1}sX_{s}^{2}\\ B_{n,k}= \frac{1}{(n - k + 1)^2} \sum_{t = k+1}^{n}(n- t + 1)X_{t}^{2}\\ B_{n,n} = 0

としたときの,

 Z_{n}= \frac{1}{\sqrt{n}}\sum_{k = 1}^{n}A_{k}X_{k}B_{k}

の極限分布を求める問題.

僕が受ける大学院の去年の問題.(参考

この各項は明らかに独立でも同分布でもない.
独立でも同分布でもないものに対する極限定理を持ち合わせていないので,手も足も出ない.
しょうがないので,数値実験を回してみた.



使った乱数はメルセンヌツイスタ,box muller法で正規分布に変換した.
n=10000として,サンプルとして10000個取ってきた.

みた感じN(0,1/3)の正規分布っぽい...

そもそも係数の1/√nがさそってる感じがしたので,正規分布に収束するような気もしていたが,
さて,独立でも同分布でもない収束定理が何かあるものかないものか...



ちょっと気になったので,他にも数値実験を回してみた.
ここからはnは1000,サンプルは100000とった.
(nの数はある程度大きければ特に関係なく,サンプルの数はきれいな分布を出すのに重要だということが分かったから笑)

まず,

\frac{1}{\sqrt{n}}\sum X_{i}^2

正規分布の2乗は一般にχ2乗分布と呼ばれていて,またこれは独立であれば再帰性も持ち合わせた分布であることはよく知られた事実.
再帰性があることは,特性関数から容易に確かめることができる.

これは独立同分布の和なので,

係数調整すればN(0,1)の正規分布に収束するはず.

ってことは,χ2乗分布も無限に足すと正規分布に収束するのか,中心極限定理恐ろしい.


で,次に

\frac{1}{\sqrt{n}}\sum X_{i}X_{i + 1}

で一個indexをずらしてみた.

各項は,同分布ではあるけど,独立ではない.


N(0,1)の正規っぽいな...

各項はN(0,2)の正規分布であることは,これも特性関数から容易に確かめることができる.

[8月4日訂正:違う、これは積だ…]
でも,それを足し合わせると,N(0,1)の正規分布っぽくなってる...


で,さらに,

\frac{1}{\sqrt{n}}\sum X_{i}^{2}X_{i + 1} X_{i+2}^{2}

今回の問題の分布に近い形.
各項はχ2乗分布*正規分布*χ2乗分布みたいな形.
同分布ではあるが,独立ではない.


で,数値計算を回すと

なんだろこれ...N(0,9)とかだったりするのかな...
分散は不明ですが,とりあえずまた正規分布っぽい形が出てきた.


ある程度の条件を満たせば,独立でも同分布でもなくても,中心極限定理みたいなのを満たす気がしてきた.
しかも,正規分布に収束する何か.
それとも,これ,正規分布っぽく見えてワイブル分布だったりするのかな.


ちなみに,大数の法則に関しては,元の確率変数列が独立というのは必要条件でないことが,かのMarkovによって示されているそうだ.(参考


従属性の中心極限定理は,ググるとすぐ生きている人の論文になるくらいにマニアックな話題みたいなだな...


ということで,インターネットの片隅に,数値実験の結果をおいておくので,誰かこれを理論化してもらえますか,という記事でした.


なお,実はこれは解けたので,続編の記事を書きました.