研究したくない人のための研究入門

僕の所属する学科(工学部)では、前期に2つの研究室に配属されて、
それぞれ1ヶ月という短い時間で研究し、その成果を発表とレポートにさせられる。


あんまり時間をかけたくなかったので、まっすぐ向き合ったわけではなかった。
だけど、それゆえ、ちょっと工夫して、2つも配属されて失敗もたくさんして、
ある程度知見もたまったので、まとめておこうと思う。


『研究したくない人のための研究入門』


研究がカリキュラムに組まれているけど、よくわかんないし、時間はかけたくない…
そういう人が、時間をかけずに、結果までたどり着く方法について考察する。
対象は、一般的な工学研究を想定しています。


0.基本方針


「サボる路線ではなくて、ゴールを決めてexitを早くする。常に整理して無駄のないように。」


コミットを外すことによる時間の節約は何にもならない、というのを痛感した。
なので、とにかく早く効率的にゴールにたどりつく、ということを考えた。
そして、「しなくてもいい無駄足」と「はまっておくべき型」がたくさん存在する。
実験結果を出し、発表、論文というのは必ずついてまわるので、
完成品を常に意識して行動する。


概要
動機
主張
その主張を何が保証するか(実験、理論etc.)
結果
考察(主張につなげる)
今後の課題
結論


筋の通ったこの一連の項目群をもって、一個の成果と呼ぶことにする。
この項目をいかにさっさと筋を通しながら満たすか、を考える。


1.テーマ選び


やりたくないことだろうとも、これは多少なりとも自分の興味のあることを選ぶべき。
「これできて何になるの?」「これ面白くない…」って思うと負けてしまう。
はやくexitを目指すには、とにかく自分の手で、
小さいなりにも主張とそれに対するサポートを作るべきなので、
自分の手で進める気にならなくなったら、精神的重荷にしかならない。


2.先行研究調査・予備実験


何のためにするかというと、主張に当たりをつけるため。
最後論文やプレゼンなどで何を主張したいのか、
その正しくなされた主張を「成果」と呼ぶので、これがなされないとあがることができない。


先行研究を調べたり、予備実験したりしながら、手を動かして知見をためる。
「自分の感覚として」何が正しそうで、何が正しくなさそうで、どういう空気感なのかをさっさとつかむ。


そして、とにかく主張したいことを形にする。
主張したいことを紙に書き下す。
問題と解決の形に分ける。


3.主張が決まったら


主張が決まったらするべきことが3つある。


i .応用先を考える
ii .何が言えればそれが主張できるのかを考える
iii.最初から最後までの流れを全部一枚の図に起こしておく

主張が決まったら、最後の形(論文、プレゼン)を意識し出だすべき。


i. 応用先を考える

その主張がなされたら、これは何になるんだろう、これができたら何に役に立つのか、と考える。
スライドや論文で言えば「動機」にあたるところを考える。
(知らないけど、どんなことをやっている誰にreferされるか、というのを考えればいいのかも)


これは、主張の本質を見極める作業になる。
応用するには、ある程度適用する形に変えないといけないが、
自分のやった環境をとっぱらっても活きることはなにか、を考えて、
主張をより明確化する目的もある。


さらに、応用をちょっと遠めに設定して、
この主張は、それが実現されるまでのロードマップの「どこらへんか」を考える。


何のためにするかというと、
これをすると、「次の一手」のアイディアが割とたくさん出てくる。
で、これらの中で、簡単に主張できそうなものは主張する、
できなさそうなものは「今後の課題」項目に放り込んで適当にどうすればいいかを提案すればよい。


ii.何が言えればその主張がなされるのかを考える

主張それ自体は、何によって保証されているのか、
その保証を探すのが研究の肝。


なので、主張を論理的に切って、さっさと問題の形にする。
で、その問題を解決するための手法を簡単に実現できそうな範囲で探す。
簡単にできなさそうなら、切り方を変える。
さらに無理そうなら、「今後の課題」に放り込み、主張それ自体を小さくする。
解決しないことがわかったら、考察をして逃げ道を探る。
あるいはそれを成果としてしまう。


iii.最初から最後までの流れを全部一枚の図にしておく。

何か論理の流れがあるはずで、完成品用の論理の流れを常に一枚の図にしておく。


そうすると、

未処理タスクは何か
どこが今は足りないのか
次の一手はどこに向かえばいいのか

がわかる。


4.形にする


上のi, ii, iiiをきちんと続けていると、結構早く形ができるはず。


全部終わったときに,iiiの図が組みあがっていたら勝ちで、
もう研究の成果としては出ている。
なので、あとはそれを形にするだけ。


形にするときに気をつけることは、「先輩のをパクる」
面倒がってこのプロセスを怠ると大変に面倒になる。
これらに関しては、決まった型が存在する。


なので、例えば、パワポならいろんな人に話を聞いて、
どうパワポを作ればいいのか、という話をあらかじめ聞いておく。相談する。
自分のやろうとしていることでは、
どういう風にしてパワポを作るのがいいのかを一番知ってるのは先輩。


さらに、論文も形式を完全にパクってしまう。
これも書き方がわからないと苦労するので、先行論文の型をパクって形にしてしまうのが手っ取り早い。


こうして完成品としての成果が出来上がる。


5.まとめ


言いたいこととしては、
面倒がって何もとっかかりをつけないと、それこそ無理。
なので、さっさと動いて、足場をさっさと組んでしまうのが手っ取り早い、ということ。


それに関しては、決まった型が存在する。
その型を埋めるようにして、完成品を意識しながら行動すると、さっさと「成果」につながるな、と思った。
この型を知らないと、大変に面倒かつ泥臭いことをたくさんさせられる。



もちろん、この成果は「大きな」成果になるものを目指していません。
どうすれば、効率的に成果にたどりつくか、について議論しているもので、
どうやったら大きな成果が出るか、については議論してません。



6.おまけ


・使うのは人

とにかく議論に詰まったら他人を呼ぶ。
突破しようとして「これがなんとなくわかんない」じゃなくて、
何に困っているのかをとにかく明確化してから人と議論をする。
オーバービューを見せて、何が問題かを指摘してもらう。
で、解決案を簡単に提案してもらう。


やることは、これを実行に移すことじゃなくて、これを吟味すること。
視点をもらっただけなので、これは「解決案」ではないことを意識しないと、
結局どこに向かっているかわからなくなる。
結果として安易に動くと無駄足になる。
(「手法」をたくさん提案してくる先輩がいて、どうすればいいかわからなかった。)


・研究室は社会

狭いなりに研究室は社会。
その社会を支配する文化、もっと言えば「宗教」みたいなのが大抵存在する。


それをさっさと汲み取って、自分のポジションを考えて、
どうすれば効率よく効果的に「利用」できるのか、を考えるのが早い。
これに失敗すると、先生の機嫌を損ねたりして、
変にぎくしゃくする。(実際やった笑)


コミットする気がないなら、
そういう「社会」につきもののいざこざを効率よく避ける方法を考えるのが早い。
研究室の人と「おともだち」になっても、効率という観点からの研究の成果には一ミリもつながらない。
なることは悪いことじゃないし、それが最適戦略のときもあるけど。



・発表の時に「ごめんなさい」という準備をしておく

研究活動に対して後ろめたい気持ちがあると、認めてもらおうと無理に通そうとする傾向がある。


質疑応答で、ツッコミが入ったときに無理に自分の主張を通そうとすると、微妙な空気になる。
質疑応答は、質問に対して「反論」をする場ではなくて、より発展する、建設的な「議論」の場ととらえるべき。
もし自分の不備があるなら、きちんと認めるのが完成品である「成果」に対しては近道。
自分の研究は、動機に対しては「未完成品」であることが多いので、それを真に肝に銘じておく。
この場を無駄にして「彼は無駄だったね」と思われる人がぼちぼちいるなぁ、と思った。
過去の僕とか笑。


質問がわからなかったら、すぐ反論に入るんじゃなくて、
質問の何が分からないかを考えて、質問し返して、相手の質問を明確にするくらいのことをする。


「それは主張できない」と言われたときにもすることは「反論」じゃなくて「質問」
「どうして相手はその主張をするのか」をきちんと把握する。
それに対して、納得できたら、現状から、何を改善すればいいのか、の議論にもちこむ。



これは痛いほど感じたので、一応おまけに入れておきました。