建築家たちの20代

建築家たちの20代

建築家たちの20代

建築家たちの20代 / 安藤忠雄
を読了。


また数ある読んだ本の中から書きやすいものをチョイスしてしまった…笑。
建築の話で切って考えるのが自然なんだけど、
「建築家」としての職業感で切って考えたい。たぶんこの本はそれが狙いだしね。
建築の本を読んで話に起こすのはそれなりに大変なんだぜ…


端的に言えば、僕は「建築家」という職業に、
それはもっと言えば、職人に、この職業感にあこがれる。


建築家は何を立てて「建築をする」のか。
画家は自分の理想をキャンバスに起こすことをするんだけど、それとは違う。
構造計算、土地、法律の制約…など、さまざまな制約条件がのしかかる。
さらに、その土地に何を立てるべきか、という話があり、それは歴史や洞察の話になり、
どう立てるべきか、という話があり、それは材料の話になる。
とにもかくにも、さまざまなものが一個のプロジェクトのもとに集まり、
それの最適解として建築が出来上がる。


何を、どう、立てるのか。
ここが建築の腕の見せ所。
そこに対して、この本は、自分がいかにしてそういう建物をたてるようになったか、という話をする。
しろうとでも「あぁこの建物知ってるわ」っていうくらいの6人の建築家が集う。



いろんな人に、いろんなバックグラウンドがあるんだけど、
何のバックグラウンドか、と言われれば、建築を実現するためのバックグラウンドなのだ。
全ては、すべての建築としての一手に還元される。


興味深いのは、若い頃何をこの人たちは考えていたんだ、という話。
ここまで来ると自己啓発本っぽいけどね笑。


建築の性格上か、多くの人が、いろんなことに興味をもて、という。
建築というフィールドは、あらゆるものの還元が許される。
そしてそれが形になる、という職業だ。


さらに、いろんな人が旅をしろ、という。
これはたぶん3つの要素に分解できて、
1つは「実際にみておけ」ということ、
もう1つは「自分の育ってきた環境と、建物の場所を相対化しろ」
そしてあともう1つ、「勉強しておけ」
ということだと見た。


建築は建物である。
それゆえに、実際に立っているものから学ばないと何も始まらない。
ガラス建築を立ててみたら、実際に埃っぽかったです、では、何も立てたことにならないのだ。
そんな場の空気感と、その空気感の文脈に位置する建物、
そしてその空気感を醸し出す気候、歴史、文化、思想…
すべてを肌で感じることが大切である、ということ。


そして、旅行という特殊状況の中に身を置いて、
自分の育ってきた空気感との差異を認める、ということ。
とにかく何度も旅に出なさい、というのは、
そういう相対化によって認識できるものを認識しなさい、だと思った。
もちろんどこかに絶対的なものを見出すのも必要なんだけど。


そして、旅は準備だ、といったペイの言葉が印象的だ。
勉強しないと感じるべきものが感じられない。
そしてそれは準備に全部かかっている、ということ。




実際に手を動かすことの重要性も大体の人が大枠で強調していたり、
歴史や文脈にそって建築を立てることも大体の人が言っていて、
大枠の建築家としての職業感はこの一冊でつかめる気がする。
で、どこに差異を出すかはその手法であり、
つまるところ、その人の思想、
というか「その人」で、その作り方は、この6人のプロフェッショナルでもその人次第。
「好奇心をもて」というのは、そういうバックグラウンドを持つための手法にすぎない。
まぁ、こういう自己啓発っぽいことはいいや笑。



この、とにかく最適条件を考え出す、ってところに僕のあこがれがある。
制約がたくさんついている、歴史という流れもあったうえで、したいことをする。
そのいろんなものを武器に、本質を考え抜いて、それを形に起こそうとするこの職業感がとにかくたまらない。
もっと建築の本を読むのはやけりゃ建築行ってたわ、正直。


都市計画、都市政策っぽいことにも建築家は関心を持つ。
これも建築が都市の文脈で存在するので、このことも考えないといけない。
ちなみに、これは僕の興味の射程でもあります。
問題意識は
建築はアートの側から、
都市計画っぽい方は、自転車で日本中を回った経験から、
で全く別アプローチなんだけど。
そこらへんへのべき論の理想として語る提言もいろんな人がする。それも面白い。



全体としては、いかにしてこういう建築をするようになったか、というお話なので、
建築一個がどう立ったのか、という話はあまりない。
そういう話に興味があれば、建築家の本(理論書ではない)を読むとわかりやすい。
「連戦連敗」には人生変えるくらいの強い影響を受けた。


あとはざっくりと建築それ自身への感想


・フランス


今度書こうと思っているんだけど、デザイン史のとらえ直しをした。
その時は、とにかくドイツのバウハウスを中心としたモダンデザインの運動が取り上げられていて、
フランスの話なんてどこにも出てこない。
ただ、建築という枠でざっくり切ると、モダニズムの流れがフランスの流れになっている気がする。
いろんな人たちが、パリの歴史的な街並みをあげて、
そしてその中の文脈に潜ませるように「あたらしい」建築をつくっていく。
モダン建築の流れをきちんと汲もうとするなら、たぶんフランスを中心に攻めるのがいい気がする。
これはル・コルビジェの流れをくんでいる安藤忠雄の影響なのかそうじゃないのかはなぞ。


デザインから汲めばドイツなんだけどね…あんまりこのバウハウス的な流れが好きになれなかった笑。
向井周太郎がウルム自慢ばっかするからかな…笑。


コールハース


コールハースの話も収録予定だったらしいが、この本の元ネタとなった講演会をキャンセルされたらしい。
コールハースは、「錯乱のニューヨーク」の人なんだけど(コレ読んだんだよね、今度まとめなきゃ…)
ここまでマンハッタンに対する考察をするのか、という本。


いろんな人が建築を立てるときに理論をかざすんだけど、
コールハースの神髄は、理論にある。手法よりかは理論。
しかしながら、コールハースは、自身の理論的アプローチを現実と近付けようと、
闘っている建築家、として安藤忠雄から捉えられていた。
理論家が理想を振りかざす中、あんだけの理論構築力をもったコールハースが、
とにもかくにも現実感のある建築を立てようとすることが意外だった、気がする。



違う分野の話するのは怖いね。
間違ってたら教えてくださいな。
建築の人とか、デザインの人とかの知り合いがほしいです。