人間になりかけたライオン


人間になりかけたライオン

人間になりかけたライオン


人間になりかけたライオン/Shel Siverstein


ちょっとしたショートストーリー。


ハンターを食って殺したライオンが、銃の練習をする。
ちゃんと撃てるようになって、ハンターを殺してばっかりいたら、
サーカスに引き抜かれる。
サーカスに引き抜かれて、一躍有名になったライオンは、
人間っぽい生活を始める。


しかし、もうすべてやることがなくなってしまった。
何をしても面白くない。
そこで、狩りに行こう、と言われて狩りに行く。
そこでライオン狩りをすることになるが、
ライオンから「お前はライオンだ、ハンターを殺せ!」と言われ
ハンターから「お前は人間だ、ライオンをうて」と言われ、
悲しくなり、どっちでもないんだ、と思ってしまってそのままどこかに行ってしまう、というストーリー。


いやーエグい笑。
人間の生活を手に入れたライオンが、ライオン狩りをするときに、自分のアイデンティティを見失ってしまう。
よくある成功者が前のことを忘れて…という話のようだが、
ここで、自分の心のよりどころが全くないことに気づいてしまう。
いくら頑張ったところでライオンなんだけれども、それを捨ててきた。
しかしながら、人間にもなりきれない。
そのはざまで、結局どっちでもなくなってしまった不幸な話。


この話から教訓を汲むのは難しい。
どうすればいいのか、というそういうことが書いてある本じゃない。
ただ、いつ、なんどきでも気づいていなきゃいけないことがある。
自分のアイデンティティだったり。
そういう物をえぐってくるのがSilversteinのうまいところ。
いくらやったって変わらないものは変わらない。
捨てるんじゃなくて、うまい付き合い方を模索していかなければ、
結局のところ、このライオンみたいになってしまう。
このライオンは元気に暮らしていけるのでしょうか。
幸せであることを願いますね。