独立でも同分布でもない確率変数の和に対する考察2

独立でも同分布でもない確率変数の和に対する数値実験なんて話を去年の8月にしていました.
ここで話題にしていた問題は,後で解けたのですが,そのことを報告しないまま過ぎてしまいました.

昨日きっかけがあってこの問題のことをふっと思い出して,懐かしくなったので書いておきます.


まず,問題(再掲)

X_{j}は標準正規分布N(0,1)に従うとして,

 \displaystyle A_{1}=0\\ A_{k}= \frac{1}{k^2}\sum_{s=1}^{k-1}sX_{s}^{2}\\ B_{n,k}= \frac{1}{(n - k + 1)^2} \sum_{t = k+1}^{n}(n- t + 1)X_{t}^{2}\\ B_{n,n} = 0

としたときの,

 Z_{n}= \frac{1}{\sqrt{n}}\sum_{k = 1}^{n}A_{k}X_{k}B_{k}

の極限分布を求めよ.


東大数理を確率論・統計で受験する人は多分解くべき問題なんだと思います.

数値実験で,なんか正規分布っぽいねーってことだけが分かっていました.



で,いろんな本をぱらぱら見てたら,こんな定理があることが分かりました.

Martingale Central Limit Theorem

マルチンゲール中心極限定理,というやつなんですが,


要は,

普通の中心極限定理→独立,同分布の確率変数列 ならば その確率変数の和は確率変数の期待値と分散の正規分布に従う

独立・同分布の確率変数列をマルチンゲールな確率変数列まで拡張できる,という話.


というわけで,先日の記事

ある程度の条件を満たせば,独立でも同分布でもなくても,中心極限定理みたいなのを満たす気がしてきた.

しかも,正規分布に収束する何か.

と数値実験の結果から予言していたわけですが,それが当たった形になります.


では,ここで問題となるのは,

1.マルチンゲールとは何か

2.問題の確率変数列はマルチンゲール中心極限定理が適用できるのか

の2つです.

というわけで,以下これについてお話します.


1.マルチンゲールとは何か

マルチンゲールの定義は,例えば本なりwikipediaなり見てくれればいいんですが,

標語的に言えば「公正な賭け」です.


もう少し言うと,

n回目までのギャンブルが終わった段階で,n+1回目のギャンブルをしたとしたら,

n回目まで終わった段階での,n+1回目のギャンブルで儲けられそうな金 = n回目までの儲け金

となる物をマルチンゲールと言います.


wikipediaの定義と合わせると, F_{n}というのがn回目までのギャンブルの情報です.


E(X_{n+1}|F_{n}) = X_{n}であれば,確率変数列X_{t}マルチンゲールであるとは,

X_{t}(t = 1 \cdots n)までがnon-randomな変数だと見て,その時に X_{n+1}の期待値を取ったら X_{n}となっていること.

これがマルチンゲールの定義です.



2.問題の確率変数列はマルチンゲール中心極限定理が適用できるのか


マルチンゲール中心極限定理をもう少しきちんと述べます.


 S_{n,k}という確率変数列があって,kについてマルチンゲールだとし, E (S_{n,k}-S_{n,k-1}) \rightarrow_{n} 0]だとする.

このとき,E((S_{n,k}-S_{n,k-1})^2) = \sigma とおくと,S_{n,k}は,N(0,\sigma)に分布収束する.


さて,あとはこの定義に整合するか考えます.

問題において,Z_{n,k} = \sum_{k=1}^{n} \frac{A_{t}X_{k}B_{n,t}}{\sqrt{n}}とおきます.

そうすると,Z_{n,k-1}まで与えられたときに,Z_{n,k}の状況を考えて,これがマルチンゲールかどうか判断すればよいわけです.

一般に,確率変数列X_{n}マルチンゲールかどうかの判定はE(X_{n} - X_{n-1} | F_{n-1}) = 0であればマルチンゲールで,そうでなければ違う,と行えばよかったわけです.

さて,この問題のとき,Z_{n,k}-Z_{n,k-1} = A_{k}X_{k}B_{n,k}なので,

E(A_{k}X_{k}B_{n,k} | F_{k-1}) = 0であってほしいわけです.


さて,ここで疑問なのはF_{k-1}の実体です.

k-1回目までで何がわかっているのか考えます.実は,ここがこの問題のミソです.


nを固定したときの1回目...だとわかりにくいので,

2回目の試行で,non-random(すでに振られたサイコロ)となってしまう確率変数が,一見全部のように見えます.

ですが,実は,non-randomとなる確率変数はX_{1}^2,X_{2},X_{3}^2 \cdots X_{n}^2です.

何を言おうとしているかというと,X_{2}以外は,元の確率変数の2乗したものしかわかりません.


ということで,F_{k}に入っている情報は, X_{1}, \cdots X_{k -1}, X_{k}^2 \cdots X_{n}^2です.



E(A_{k}X_{k}B_{n,k} | F_{k-1})について考えると,このとき,A_{k}, B_{n,k}は各種X_{t}^2で生成されているのですでにnon-randomとなっています.
つまり,A_{k}, B_{n,k}, X_{k}^2についてわかってしまっているのですが,X_{k}^2のもととなるX_{k}分だけランダムネスが残っています.

元を正すとX_{k}正規分布でした.なので,プラスマイナス等確率で出ます.

結局,(何か係数)*(同じ絶対値の+か-か当確率で出る確率変数)*(また何か別の係数)の期待値を求めることになって,これの期待値は0です.


ということで,この問題は,マルチンゲール中心極限定理の条件を満たすことになります.


あとはゴリゴリ計算するだけです. E (\frac{(A_{k}X_{k}B_{n,k})^2}{n})の和を求めることがゴールとなります.


で,結局確かN(0, 3/2 - log 2)とかに収束するはずです.

実際に理論値と実験値のグラフを当時比べたりして,とても近いことを確認していたのですが,データがどこかいってしまった,かつ実験値のほうが計算にとても時間がかかるので,グラフは省略させてもらいます.



長くなりましたが,こんな感じでもとまります.

ちなみに,マルチンゲール中心極限定理を知らなくても確か出てきて,なにかきめうちで分布を持ってきて,それに2次平均収束をすることを言えば確か出てきたはず.どう解いたのか忘れちゃったけど.


豆知識ですが,極限分布を求める問題は2年に1回出ます.で,この問題は2年前の問題です.なので,今年は多分出るんじゃないかな.
大体の問題を計算機にかけて解いていたので,そのプログラムならあります,興味があれば連絡を笑.


        • -

さて,結局ここの院試は落ちてしまいました.
今は情報と数学のあいのこのような専攻にいます.学科の大学院にそのまま進んだ形になります.


純粋数学を志して,そういう大学院を受けたわけですが,結局のところ,筆記試験は通ったものの,面接でこの世のものとは思えないほどぼこぼこにされ,落ちました.

あー純粋数学は向いてなかったんだなーって心の底から思った瞬間でした.

結局,院試の過程で,こうやって計算機にかけて数学の問題を考えるのが楽しかったのをよく覚えています.

組んだプログラムは(今からすれば)たいしたことはないんだけど,なんというか,今研究している原点になっている感じはちょっとする.ちなみに今もたいしたことはあんまりしてない.


この問題を考えていたときに,当時確率過程を習っていた先生のところに頻繁に行っては,
「実験結果としてこういうのが出たんだけど,なんか定理ないのか」とか,
「解けたから見てくれ」とか言いに行っていました.


最後,この先生に数理の院試に落ちたことを報告したのですが,
「数学の研究は,別にどこでもできる.どこに行っても立派に一流の研究をしてくれ.」
といわれました.
なんというか,心に残っていて,そういう意味でも,この問題はとても思い出深い.


結果を持っていくたびに「面白い」といってくれたことがとてもうれしくて,もうすでに純粋数学のことは忘れかけているのですが,
あれから人から「面白い」といわれるように研究や発表をしています.
最後ちょっといい話.

自分の評価を決めるのは他人

研究者を目指す普通の学生に

「研究者を目指す学生がするべきn個のこと」みたいな記事はちょっとアレだけど,面白かったので転載.


研究者になるつもりがあるのかないのか,という話はともかく,(ちなみにこの問いのたて方にはちょっと疑問がある
アカデミアのtraineeとして大学院にいる超絶凡人として思うことがいくつかある.
実際は卒論の時から大分訓練されてたから,traineeになってからもう半年経ってるっていう認識なんだけど.

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自分の評価を決めるのは他人なんだな,という話.
自分のやってることの面白さと妥当さを説明する義務がある.
で,そんなときに成し遂げるアウトプットは大抵が自分のクローンなんだな.
そのクローンて言うのは,問題設定から解決能力も含めて,という意味.
そんなお話.

              • -

「自分の評価は自分で決めましょう」
僕が学部1年生とか2年生くらいの時によく聞いた言葉.
コレの意味するところはざっくり言えば,
「他人の目は気にせず,自分のやりたいようにやりましょう」ということなんだと思う.
なんだけど,この言葉は,なんていうか,学部の3年生くらいまでにしか,effectiveでない言葉だな,と思う.


これが明確に攻撃対象としている感情は「自己顕示欲」に準ずる欲求で,
「人からすごい/面白いと思われたい」という行動原理で行動している連中なんだと思う.
こう描くとそんなバカな,と思うけど,こういうのはごく普通にいる(自分もその一味だったけど
・休学してなんかしている(から面白いと思われたい
・○○の代表しています(なので,面白いと思われたい
・研究者になりたい自分を認めるために進んだゼミに顔をだす(で,すごいと言われたい
なんて人はゴマンといる.


もちろんそうした行動の中から得るものはあるんだけど,
何かするときに,目的くらいは独立させないとまずいと思う.
自己顕示欲で行動すると,
どこぞの前首相みたいに「原発を止める」とかいうスタンドプレーをいきなりしだす人になったり,
どこぞの元首相みたいに「イランにいって核について抗議する」とかいうもはやノーベル平和賞がほしいだけの人になったりする.
あまりにも好例過ぎて使ってしまったが,僕は政治主張がしたいのではなく,
主張したいことは自己顕示欲で行動することの,他人に対する効果の薄さである.


で,そこで出てくるのが,次のフェーズ,「自分を評価するのはやっぱり他人」
じゃあそんな自己顕示欲も捨てて自分が面白いと思うことをやろう,と思ったときに,
それのインパクトが他人に及ばないとただのオタクと化す.
それはきちんと他人につたえて,他人から評価されるべきだと思う.
アカデミアで言えば論文を出して発表をして,後でどれくらい引用されるかetcで評価されるんだろうな.


じゃあ,なんかしようと思ったときに,出てくるものは
「一流の研究者は一流の人間」「つまらん研究をする人はつまらん人間」という言葉だと思う.
自分がやることは,大抵は自分のクローンなんだな,と思っている.
自分が「これは問題だ」と思うことにしかカタがつけられない.
今まで手を動かしてきた帰結として,問題と感じることにしかカタをつけようという気にもならないのかな,と思う.
実際僕がやってきたことをこの間並べてみたら,大体が自分のクローン,
つまり,僕が問題だと思ったことを解決してきただけだなと思った.
そんなこんなで,「何を問題か」と思うことは,自分が何をしてきたか,というかもっと言うと
自分がどう生きてきたか,を大分反映している.
だから,一流の問題を解く人は一流なんだろうと思う.

ちなみに問題と感じる者の中でも特に解くべき問題は「世の中の役に立つ」「本当に何が大切かを考える」のような気がする.


で,問題を設定したときに出てくるのが「結果がすべて」で.
解かないと意味がない.解けないと意味がない.解いてインパクトがないと意味がない.
考えてることだけが面白いやつになっても意味がない.
考えることは誰にでもできるから,そこだけ鍛えるのはまぁいいのだけど,
結局何もできないと,価値がないまま終わってしまう.
よく「○○したいです!」とか言う奴いるけど,
「それをこなす能力があるんですか」という質問はなかなか飛んでこない,けど大事な部分だと思う.
問題を解く腕力を身につけたほうがいい,そしてきちんと結果をついて来させる腕力をつけたほうがいいと思っている.


自己顕示欲から早く独立して,
そのあとは人生の各フェーズで,
「自分は何を問題だと思っていて,自分はそれを解決できるスキルがどれくらいあるのか」というのが,重要な気がする.
足並みをそろえながら遠くにいかないと不幸なことになるのかなぁといった感じ.


こうやってみてみると,一流の人間が一流のことをしているんだなぁと思う.
よくうちの大学には二物を与えられたような人がいるけど,
それも「一流の人間が一流のことをしている」のかなぁと思って納得している.
うちの大学で極めて優秀な人をちょいちょい見かけたけど,大体がこんな感じだったなぁなんて思ってる.

プレゼントは捨てられないものを

最近また人と話すことについて考えている.
で,気持ちよく相手が話しているなーという感覚を得たときに,
表層的なレベルの話に対して,「なんでそんなこと考えるのか」と問うと,
他の人から見ればどうでもいいような自分の原体験を語ることが多々ある.
例えば,僕は起業してこんなことしました→いや中学生の時にねetcみたいな感じのこと.
その人にとって,多分本人でさえそれは気付いてないかもしれないけど,本当に大事な話なんだろうな,と思う.


ただの自分のアピールであれば,
表層的な部分にロジックをお仕着せしたり,
そのインパクトを定量化したりすると伝わる.
だけど,なんでこの人もともとこんなことに興味持っているのか/そういう状況に陥っているのか,
みたいな話は,大抵個人の(他の人から見れば本当にどうでもいい)些細なことに行きつくことが多い.
僕でいえば,平日の昼間に外を歩いている人を小学生の時に窓から見た話(その話はこちら),というのは,
なんていうか,自分の行動原理の一部を作っている気がする.
この話は人から見れば極めてどうでもいいのだけど,自分にとって本当に大事な話.


ということで,前置きが長いが,
そういう「どうでもいいけどとても印象に残っていること」というのは大事な気が最近している.


そんな話をこれからします.


僕は,プレゼンでもイベントでも,何か他人に伝えることを考えたときに,
「受け手が何を思うのか」ということからスタートして考えている気がする.
自分がアップアップすぎると意識できないんだけど,
これ見た人間何を思うのかなというのを意識する.
徹底できないと自分の中でちょっと完成度落ちたな,と思ってしまう.


そう思う僕の些細な話.「プレゼント」の話.


高校生の時に,L25というフリーペーパーを読んでいて,
今もあるか知らないけど,豊島ミホという作家がコラムを書いていた.
その話は「プレゼント」に関係する話.


こんな感じの話だったように記憶している.
彼氏にプレゼントをあげるときに「別れても捨てられないものをあげる」ことを考えた,
なぜなら物には罪がないから.
別れたときに指輪とかなら拒絶したいような気持ちが入って捨ててしまうだろう.
ということで,当時の彼氏はやかんを持ってなかったので,やかんをあげた.
やかんなら多分別れても捨てる気にもならないだろうから.


という簡単な話だったんだけど,
高校生の時の僕は「プレゼントをあげる行為ていいな」と思った.


当時高校生であった僕の「プレゼント観」に関して,さらにどうでもいい話がある.
小学生の時にクラスでクリスマスにプレゼント交換会をやるかやらないか,という議題があって,
僕は反対していた.
さらに話が進むうちに,僕一人で孤立した.
「これは自分のあげたものより変なの来たら損をするし,
そもそも学校と言う場に何かお金を使うべきでない」
という主張を小学生の言葉で(最後は泣きながら笑)した.
「みんなで交換するのが楽しいじゃん」的な空気に教室に包まれ,イベントが行われることが決定された.
で,結局僕は親に言えないまま当日が来てしまって,
落ちていた定規を画用紙でくるんでプレゼント交換に出した.
「なんでもいいんだよ」と言って説得されたから,これでもいいだろうと思った.
来たのはお高いチョコレートだった.まぁこんなものかと思った.
なんだけど,「斎藤何言ってんの,やるからやるんだよ」として話をまとめた女の子がこんなことを言っていた.
「持ってくる気がないなら,参加しなきゃいいのに.」


この話の大きな問題に,さっきのコラムを読んで高校生の僕は気付いた.
それは,登場人物がみんな自分のことしか考えてない,ということ.
僕は単純に損をしたくなかったし違和感があった.
女の子は,自分の出したものと同程度の物が自動的にもらえると勝手に思い込んだうえで,
まぁ(自分が)楽しければいいよね,くらいことしか考えてない.
だからノイズが入ると,極端に拒否反応を示したんだと思う.
で,まぁそんな腫れものが落ちた気がして,プレゼントをあげる行為は素敵だなと思った.



それ以来(めったにないけど)人になんか物をあげるとき,
その人のことを思い返しながら,買うようになった.
特に何かプレゼントにこだわりたいと思う時は,
「この人なら何を恒常的に使ってくれるかな」と考えながら買うようになった.

その時に意識することは,「これはあいつがくれたもの」と相手に思わせない物をあげること.
恒常的に使ってもらって,たまに思い返すくらいの物がいい.
そうであれば,いいプレゼントだな,と言えるんじゃないか,と思うようになった.


自分が体験した例をあげます.


まずはもらった話.


2年生くらいの時に所属したゼミで,またプレゼント交換があった.
本の交換で,「何を自分が伝えたいのかを考えてから持ってこい」みたいな趣旨だった気がする.
自分が何を出したかは覚えていない.
でも,僕は僕がもらったものを強烈に覚えている.
「星の王子様」だった.
この本は,僕が「何か一冊読めばいい本」を聞かれたときに答えるリストのうちの一つに入るくらいに影響を受けた.
で,後輩に「星の王子様」を紹介したときに,
居合わせた友人に「あ,それ俺があげたやつだよね」といわれた.


僕は一切そんなことを忘れていた.そういやそうだ,くらいだった.
不義理といえばそうなんだけど,
そいつがくれたからという理由で読んだわけでもないし,
そいつがくれたから,という理由で影響を受けたわけでもない.
でもこれは逆に誇るべきことだなぁと僕は思っていて,
それくらいに僕はその本自体に影響を受けた.
この話を1からするのは面倒だったので言わなかったけど,
それ以来,普段は忘れてるけど,たまに強烈に感謝している.



あげた話.


何の思い付きだか忘れたが,何かの思いつきで,
留学に行く友達にプレゼントをあげようと思った.
そのときに思ったことは,
「海外ではなかなか手に入らないけど,日本における普段の生活で欠かせないもの」
をあげようと思った.
僕の候補は,耳かきか,つめきりか,箸だった.手に入りやすさの観点から箸にした記憶がある.
で,帰ってきたときに,ちらっとメールで「箸毎日使ってたよ」ということがしれっと書いてあった.
で,また,この話をするのも面倒だし笑,いちいちいろんなことを聞くのも野暮なので
「あーあげたね,使ってくれてうれしい」くらいのことを返した気がする.
ちなみにあげたことは忘れていた.


でも,これ実を言うと,ものすごくうれしかった.
たぶん相手は,「あいつがくれたから」という理由で使っていたわけではないことが想像されるから.
それは,言ってしまえば,たまにあるくらいがちょうどいいアクセントで,究極的にはいらないものだと思う.
あんまり連絡を取らない人が,自分のあげたものを,自分という存在を忘れた上で使ってくれていたと思うと,とてもうれしい.
ちょうど,人の関係性は違うが,豊島ミホが言っている「やかん」と同じポジションのものをあげられたのだと思うと,本当にうれしかった.
これでもし,あいつがくれたから,の「あいつ」の部分の理由で使ってたら,
僕はプレゼントの考え方の戦略に関してほぼ0から考え直す必要がある気がする.
しかもさらに,うそかもしれないけど,それはそれで知らないふりをしておく.



話はこんな感じで,
結局,僕は他人の,なんていうか本質的な部分をつくのが好きで,
もしそれは僕がしたことの僕という部分が忘却されるくらいに血肉化されてしまうものなら,とてもうれしい.
そういう話に「なんで?」と聞かれたら,このプレゼントの話がある.
プレゼントの話自体は些細なことでどうでもいい話だと思う.
なんだけど,僕にとっては僕がたまに思い返すものすごく重要な話.



P.S.

なんでこんなことを思い返したかというと,
こんな本を読んだ.

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)

フェイスブック 若き天才の野望 (5億人をつなぐソーシャルネットワークはこう生まれた)

Zuckerbergはこんなことを言っている.
facebookはインフラだ.究極的には僕ら(facebook)という存在は見えてはならない」

このコメントに共感して,最近強くまたプレゼントの話を考えるようになった.


よく考えれば,
誰もfacebookを使うときに「facebookを使ってるんだ」と思いながら使わないし,
そう思って使う人はたぶんfacebookは長続きしない.
たとえば「イノベーション」みたいなことの大きな事例として必ずあがるiPadを使うときには,
あれを便利だと思って使ってる人は,Jobsが作ったから,なんて誰も思わない.
たまーに「あぁ,そういえばそうだった.あの人は偉大だったなぁ.」くらいのことを思う.
apple製品に関しては,その頻度が割と高いのだろうけど,
使っているときに常に思いながら使うことは本当に一般的なユーザーであればないと思う.
googleだってBrinとPageが作ったなんて誰も思わない.



他人から話がはじまるべきこと,自分は話に出てくるべきでないこと.
たぶん僕の考えは,そんなに間違ってないのだろうな,と思っている.

たかが2時間,されど2時間

最近当たり映画が多くてとても嬉しい.


当たり映画が多いと,もう1回見たいなーって思ってしまう.


2時間で完結して楽しめるといったお手ごろさが映画の強みでもあると思う.
だけど,されど2時間であって,もう1度見るのはとても手間だ.
実際,もう2時間作り出すのは,学生の身分をしている今ですら,少し厳しい.


よい映画に出会ったとき,もう1度見たい,って甘えた気持ちで見るんじゃなくて,これ1回こっきりしか見られなかったら何を見て感じるのかに集中したいなーと思った.

これよい映画だなーと見ている最中に思ったら,それまで以上に世界に入り込んでみたほうがよいなぁと思った.

もう1回見そうだなーといった甘えた気持ちが感受性を落とす気がしている.

あんまり前評判とかを気にしないで見ている.つまり,見ている映画との出会いは偶然なんだし,一期一会感をもう少し大事にしたほうがいいなぁと感じている.

もしインド洋の島に映画館を出すとしたら

最近,よく将来のことについて聞かれるのだが,決まってこう答えるようにしている.
「インド洋の島で映画館をやりたい」


大抵の場合,冷やかな笑いをされて終わるのだけど,この間
「何の映画やるの?」
と聞かれて,そう来たか,と思ってしまった.


up-to-dateな映画と,
ローカル民が好きそうな映画と,
自分が好きな映画をだらだら流していくのをなんとなく夢見てたんだけど,
じゃあ自分が好きな映画はなんだろう,と思った.


ということで,見てきたなかで,10本くらい面白かったものをピックアップする.
自分用のメモです.



僕は映画を見るのが個人的に好きなだけで,
人に映画好きキャラでおせるほど詳しくないです.


1.es (原題:Das Experiment)

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高校生の時に「映画って面白いなー」って思わせてくれた作品.ドイツ映画.
スタンフォード監獄実験をベースにしたお話.


疑似刑務所において,看守と囚人役にわかれて,人間がどのように行動するかを観察する心理実験の様子が描かれている.
それを通して,人間が極限状態でどんな感じで行動するのかが上手に描かれてる,と思った.



2.トイストーリー (原題:Toy Story)



いや,単純に好きだから(笑)
また見たいなー


3.(500日)のサマー (原題:500 days of Summer)


いわゆる草食系男子がちょっと変わった女の子サマーに一目ぼれして振られる話.
主人公の男が成長するサマが好き.


4.戦場でワルツを(英題:Waltz with Bashir)

戦場でワルツを 完全版 [DVD]

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監督が実際に体験した1982年のレバノン内戦の記憶に関する映画.
アニメで戦争映画を描くという,新しい試みみたいなのが面白い.


イスラエルの映画で,周辺諸国で発禁を食らいまくったといういわくつき.


5.ロスト・イン・トランスレーション (原題:lost in translation

ロスト・イン・トランスレーション [DVD]

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日本にやってきた大物俳優が,さみしさを感じ,
日本で知り合った同じアメリカ人に淡い恋心を抱く話.


異国の地でさみしさを感じる感覚はなんとなく共感できたのと,
それを描く舞台を日本にするとこう描かれるのかーってのに随所に「へぇー」って感じがあったので面白かった.

僕は日本でその感覚を味わうことは死ぬまでないので,
そう思いながらこの映画を見るとなんか不思議な感じになる.


同じく,そっか東京は外人から見てこう描かれるのかーというのに
the fierce imagination of Haruki Murakamiという描きものがあるので,紹介しておきます.
NYTimesの記者が,村上春樹を大量に読んでから東京に訪ねる話.



6.全部フィデルのせい(原題:La Faute à Fidel!)

ぜんぶ、フィデルのせい [DVD]

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反体制運動に従事する父と,中絶反対団体に従事する母の間に生まれた子供アンナを通して,
大人の矛盾を描くお話.

終始子供の目線というのが推しだと勝手に思っている.
フランス映画らしく,もりあげてハッピーエンド,みたいなオチにしないのが好き.


7.扉をたたく人(原題:The Visitors)

扉をたたく人 [DVD]

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アメリカの大学教授が,ニューヨークで,アフリカ移民から伝統楽器ジャンべを習う話.
アフリカ移民は不法入国でしょっぴかれ,そのあたりの社会問題を描きつつ,基本はハートウォーミングな感じのお話.


8.オーケストラ!(原題:Le concert)

オーケストラ! スペシャル・エディション(2枚組) [DVD]

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30年前,ソ連で行われたユダヤ人排斥により,解散に追い込まれたポリジョイ楽団.
当時の指揮者は,まだ夢を捨てきれず,コンサートホールで掃除する人として働いている.
ある日,パリの有名コンサートホールからFaxでオファーが来たのを見て,主人公がそれをがめる.
当時の楽団のメンバーを集めて,新進気鋭のパリのソリストを呼び,コンサートを開くお話.


当時の楽団のメンバーはロシアからみんな偽造パスポートで不法入国した揚句に,
練習には全く行かずに不法就労しだしたりと,笑える部分も結構ありながら,
歴史をバックボーンにしたり,特に最後15分のオーケストラの演奏シーンは本当に圧巻.


9.イントゥ・ザ・ワイルド(原題:Into the Wild)

イントゥ・ザ・ワイルド [DVD]

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社会の矛盾に我慢できず,大学卒業と同時にアラスカに旅立つ若者の話.
旅の途中でいろんな人に会いながら,主人公の考え方が変わっていく様を描く.
落とすところにきちんと落としているのがアメリカの映画らしいけど,
そういう偽善臭さを差っ引いても,面白かった.


10.ヒョンスンの放課後(原題:A State of Mind)


ちょっと一風変わった映画の紹介.イギリスの映画.


北朝鮮アリラン祭のマスゲームの演者である女の子を追うドキュメンタリー映画
北朝鮮の庶民はこんな風に考えるんだーというのが,素直に衝撃だった.


将軍様にお見せできると思うとわくわくする」
アメリカは我が国を孤立させようとしているが,耐えなければならない...」


いやまぁとにかく,こういう国があるんだ,というのが素直に衝撃.

こっち(北朝鮮 マスゲームにかける青春)から見られます.



ぱーっと10個思いつくままに並べてみた.
ただ思いついた映画を10個並べたんだけど,少し意識したのは,
「異文化」や「違う考え方」の追体験にフォーカスされてそうな映画をたくさん選んだことかな.
トイストーリー,500日のサマー,イントゥ・ザ・ワイルド以外は大体そんなタイプの映画.
映画の醍醐味は,そういうのが簡単に見られるところだと個人的には思っている.


##追記
インド洋の島で映画館やるなら,
ハリウッドの映画はやらないだろうな.
山もなければオチもないようなフランス映画を基軸にしたいとふっと考えた.

マダガスカルに行きたい人のための一般的な情報2

マダガスカルに行きたい人のための一般的な情報1に書いた内容の続きです。


0.概論

i.魅力

ii.どうやっていくのか

iii.ガイドブック

1.お金

i.アリアリ

ii.ユーロ、米ドルなどの外貨

2.言葉

3.交通

長距離
i.タクシーブルース

ii.飛行機

iii.チャーター

短距離
i.タクシーなど

ii.バス

4.ガイド

5.感染症

i.下痢

ii.マラリア


のうち、3から書きます。

1-2は前のエントリをご参照ください。



3.交通


主に国内の交通手段について書こうと思います。

この国はこれがとにかく肝です。

なぜなら、この国で見るべきものがあちこちに点在しており、

その間には何も観光資源はないため、必ず何かで移動しないといけないからです。


最初に長距離の移動手段から。


この国は、移動するには、根性かお金が要ります。


移動手段をあげると、


長距離
i.タクシーブルース

ii.飛行機

iii.チャーター


端的に述べると


i.タクシーブルース

マダガスカル庶民の足、ただし観光客が乗るようには全くできてない。


ii.フライト

一番楽、だがしかし予約が大変。高い。


iii.車のチャーター

思いつきでも乗れる。運ちゃんとしゃべれると楽しい。フライトと同じく高い。



詳細


i.タクシーブルース

国内長距離バスのことを言います。

バスと言っても大きめのワゴンみたいなものが多いです。

タクシーブルースについての詳細な記述は


その名はタクシーブルース マダガスカルを失踪中(深沢秀雄 マダガスカル研究のページ)


Taxi-brousse, Lonely Planet pp.284-285


を参照されるとよいです。


なので、僕が旅で感じたことを書きます。


以下の項目を書きます。


乗り方


特徴

・安い

・庶民の感覚が分かる

・窮屈

・道路の状況が悪い




乗り方

街にあるタクシーブルース乗り場に行く。

あとで述べるように、窮屈、さらに満員になるまで出発しないので、

タクシーブルースを使うなら、前日までに予約をしに行った方がよい。


タクシーブルースは、バスが何時からどこそこ行きが発車しますスタイルではなくて、

いくつもの会社が参画していて、乗り場に行くと、とにかくいろんな車がある。

基本的には値段は変わらない、らしい。

前日までに朝一発のタクシーブルースを予約すると通路側、あるいは窓側の席に座れる。


当日行くと、いつ発車するかわからない上に、真ん中に座らされる。

これが極めて苦痛。


ちなみに、英語はほとんど通じない。

フランス語を単語で出して、行き先を怒鳴ると予約してくれる。

フランス語かマダガスカル語が話せないと田舎だと本当に笑われる。

変な話だけど、「じゃぽね」(日本人です)と先に言っておくとあしらわれることはないと思う。

ただ、ぼられる可能性もある。



また、例えば、キリンディー保護区やペリネ保護区に行きたい場合、

地球の歩き方などには

「キリンディーに行くためには、チィンギー行きのタクシーブルースを捕まえて入口で下ろしてもらう」

みたいな記述がある。

これを見ると、「帰りはどうするの?」と思うが、


帰りはおろしてもらった場所に立ち、タクシーブルースが通りかかるまで待つ。


先ほども述べたように、タクシーブルースはたくさんの会社が参画しているので、

1, 2時間も待てば必ず来る。(だがしかし、乗れるかどうかは別)


僕は、ペリネ保護区からタナに帰るときにこれをやった。

30分くらい待ってたらタクシーブルースが通りかかったので、

道路の真ん中に出て跳ねて"Stoooooooooop!!!!!!"って叫んでとまってもらった



特徴

・安い

アンダシベ-アンタナナリボ間が4000Ar(2時間半、160円)

タマタブ-アンタナナリボ間が26000Ar(9時間、1000円強)

フォードーファン-イフシ間が60000Ar(34時間、2400円)


空路に比べたら安い。

フォード―ファン-イフシ間はあとでも述べますが悪夢です。


・庶民の感覚が分かる

マダガスカルの田舎町に寄りながら、目的地まで向かいます。

その場所その場所でそこの人たちの暮らしが良く見えます。

また、乗っている人も庶民です。

タクシーブルース乗ったら、英語しゃべる人は1人いるかいないかですが、

そういう人と話すと、マダガスカルの暮らしがよくわかります。


ちなみに、観光客は乗らないものと思われているらしく、

Where do you live in Madagascar? in Tana? Why did you move to Madagascar from Japan?

と聞かれました。moveを使われたのは衝撃的だった。


それとたまたま英語話せる人と知り合いになったおかげで、たまたまヒッチハイクできました。


・窮屈

10人乗りのワゴンに17人乗っていました。

端の席か助手席を確保するのは、長旅では必須です。必ず前日までに予約しましょう。


・道路の状況が悪い

マダガスカルは本当に道が悪いです。

ロンリープラネットにroughと書いてあれば、大抵がroughだと思います。


有名なサザンクロス街道(国道7号、アンタナナリボ-チュレアール間)はある程度道路状況がましでした。

フォード―ファン-イフシ間は、国道13号という、マダガスカル人でも震え上がるような道でした。500km移動に34時間かかったあたりが全てを物語っている。



短距離

街の中の移動の話

大きく分けて2つあります。

・タクシー

・バス


・タクシー

タクシーが誰向けにあるのか、街によってまちまちです。

例えば首都であれば、確実に裕福層向けにタクシーが存在しています。

ちょっとの移動で4000Arします。

ちなみに首都のタクシーは交渉可です。


例えばフォード―ファンであれば、一回乗るのに1000Arと、庶民向けです。

その代わり、とにもかくにも相乗りします。

街にタクシーがうろうろしていて、誰が乗っていようとも庶民がそれを捕まえて乗る、というスタイルができていました。


とはいえ、マダガスカルの都市部は見るものもないうえにそんなに大きくないので、

歩いて道に迷ったら捕まえる程度でいいと思います(首都を除く)


大抵は街中-空港は高いです。



なお、人力車が普通に走っています。

これは乗る機会がなかったのですが、タクシーよりは安いらしいです。


・バス

首都はタクシーブルースではないけど、バスが発達しています。

タクシーが4000Arに比べて、バスは200Arで乗れます。

ただ、致命的に言語が通じない。フランス語も通じるか怪しい。

さらに、路線が複雑なので、言語ができないと乗れないし、聞いても相手にしてもらえません。

実際、首都でマダガスカル人と一緒に乗った時は何の苦もなく乗れたのですが、

自分一人だと、乗せてもらえませんでした。

あらかじめ行き先が分かっていて、何のバスに乗るのかさえわかっていれば、むすっとしていればよいので、乗せてもらえると思います。



4.ガイド


結論からいいます。

この国では、ガイドがいないと旅行ができません。

でもそんなに高くないので、積極的に雇いましょう。特に保護区では必須。

一日拘束してものすごくいいガイドで車込みで120000Arだったのには感動した。

ただ、首都では質も低いのに高額(といっても20000Arとかだけど)要求されたりするので、事前に調整しましょう。



どこで雇うか、ですが、

大抵は、モロンダバみたいなみんな行くところだと、空港にガイドが群がっています。

で、観光客を取りあいます。


あるいは、保護区や観光名所の入口でうろうろしていると話しかけられます。


モロンダバはよく日本人がくるらしく、日本語を勉強しているガイドがいました。

本当にこの人はいい人だったので、気になるのであればWho speaks Japanese?とか聞けば出てくると思います。


保護区は、ガイドと一緒ではないと入れないことになっているし、

実際、ガイドと一緒ではないと、厳しいです。

大抵のガイドは英語で案内してくれます。



なお、首都はちょっとだけ文化遺産が存在し、その前にもガイドがいます。

首都は物価が高いためか、ガイドも高いです。しかも別にいらないかな、というのが個人的な感想でした。参考までに。



5.感染症


最後に、気をつけるべき病気について書きます。

結論から言うと、外務省の世界の医療事情マダガスカルは大体正しいです。

実際に旅行者が注意すべきなのは下痢とマラリアです。


i.下痢

途上国を旅行するなら下痢くらい当たり前だよね、くらいの覚悟と楽観をもって旅行したほうがよいでしょう。

実際、僕は1週間やられてました。日本人に薬譲ってもらってようやくなんとかなりました。

地元民向けの物は、衛生状態はそんなにいいとは言えません。

市場で物を買うと、焼いた魚とかおいてあるのですが、いつ焼いたんですか、というかそれそのまま置いとくとハエたかるよね、というかたかってるよね、といった感じでした。

僕は生野菜食ったからなのか、市場でバナナ食ったからなのかわかりませんが、とりあえず腹を壊しました。


cook it, boil it, peel it, or forget it.

調理するか煮るか剥くかしなさい、さもなくば諦めなさい。

この言葉を胸に刻んで旅行をしましょう。


ii.マラリア

結論から言うと地元民の情報を合わせると「東側は危ない。西と南はそこまででもない。首都圏では大丈夫。」です。


まず、マラリアは、熱帯性マラリア、という悪質なマラリアにかかると5日以内に治療を開始しないと死ぬ可能性が高いです。

首都には、フランスの出先機関があったりしてマラリアにかかったら収容されるべき場所があるのですが、地方に行くと薬がないという事態が推測されます。

実際、地方の病院はユニセフからの寄付で薬がある状態です。しかしながら、マラリアの薬で、今のところ最強とされているメフロキンは、8錠で140000Arします。


ということで、蚊にさされないようにするのが一番の予防です。

蚊帳がないような宿に泊らない。蚊取り線香を持ち歩く。などなど。

なお、森林で暮らそうとする人、流行地域へ行こうとする人は、最初に首都に寄ってから、メフロキン製剤のラリアムを購入してから向かうとよいでしょう。

予防薬として飲むそうです。1錠で週1回持ちます。


とは言えども、さしてマダガスカルではマラリアは流行ってないようです。

特に中央高地では、大学生に「マラリアにかかったことあるか?」と聞いたら「ない」と答えていました。


しかし注意すべきなのは

雨季から乾季への変わり目で旅行をする人、

東側へ行く人

だそうです。

西も南も、雨季から乾季に旅行する人は、十分に気をつけた方がいいです。

東はサイクロンの通り道なので、あまり開発が進んでいないようです。それゆえ、マラリアも年中危ない、と言われました。



また、マラリアの流行地域に滞在したことがある人は、1年間献血にいけません。

居住したことある人は、3年間献血にいけません。

WHOのInternational travel and healthで、どこが流行地域か、あるいはどのような対策をすればいいのか、が見られます。

マダガスカルに行きたい人のための一般的な情報1

2011年9月27日から10月11日までマダガスカルという国に旅行に出ていました。

なぜ行きたかったのか、という話はともかく、行くにあたって、また行ったときに、

知りたい情報が事前に手に入らなかった、
あるいは、
旅行記は結構あるものの、一般的な情報はその中から探さないとわからなかった。

ということが多々起こったので、行ってきた身分として、


「気になるけど、ガイドブックには載ってないが、自分の手でつかみたいようなものではない情報」


をまとめようと思います。


なお、以下のことを記しました。


0.概論
i.魅力
ii.どうやっていくのか
iii.ガイドブック
1.お金
i.アリアリ
ii.ユーロ、米ドルなどの外貨
2.言葉
3.交通

  • 長距離

i.タクシーブルース
ii.飛行機
iii.チャーター

  • 短距離

i.タクシーなど
4.ガイド
5.感染症
i.下痢
ii.マラリア



では以下本論です。


0.概論


マダガスカルはどういう国なのか、どうやったらいけるのか、ということを簡単にお話します。
簡単にまとめると「旅行するには、お金か根性がいる国」だと思ってください。


i.魅力

簡単にいえば

・自然などマダガスカル固有のもの
・観光開発されきってない人々の素朴な感じ

にあると思います。

前者は観光業者などに宣伝されているもので、多くの人たちが見に行くものです。
ですが、そこに住む人たちは、観光業を営んでいる人たち特有の「すれた」感じがまだなく、
開発もされきってなくて、多くの街では、
すぐそばにそこで住んでいる人たちがたくさんいて、人懐っこいです。


そういう物が好きな人には楽しい旅行になると思います。


ii.日本からどうやって行くのか

バンコクからマダガスカル航空が出ています。
多くの人がこれを使います。


なお、HISなどの代理店で取ると40万を超えたりしてとっても高いので、
マダガスカル航空のウェブサイトから取るとよいでしょう。
10月15日現在Bangkok-Antananarivo間624ユーロと出てますが、
多分もう少し加算されて10万円弱に落ち着くはずです。


僕は、格安航空券の代理店に頼んで、19万円程度で全行程往復を抑えました。
なお、交通のところで述べますが、国際線と国内線は一緒に予約すると国内線の割引がかなり効きます。



iii.誰が来るのか


ダントツで多いのは、フランス人カップル家族です。20代後半くらいからきます。
日本でいえば沖縄の少し離れた離島みたいなノリできます。
とにかくフランス人ばかりいます。


イタリア人、日本人、アメリカ人などがよくいるそうですが、どれもあまり見かけませんでした。
フランス人以外は大体「金持ちの旅行好き」です。
バックパッカーも(時期が時期だったのか)いませんでした。
バックパッカーがめぐるには結構厳しい国であるのは間違いありません。
(見られるものが大体郊外にある、道路条件が厳しい、などなど)


バンコクから出ていますが、タイ人の旅行客はあまりいません。中国人はちらほらいます。
タイから直通便が出ている理由があるのですが、それは本論からそれるので触れません。


iv.ガイドブック

ガイドブックをもっていかないと、マダガスカル旅行ではそれは直ちに死を意味します。
「□□は○○という街にあります」とあっても、北に60kmくらい行ったところにある、とかザラだからです。
多くの人が、自然を見に行くのであって、街を旅行するわけではないので、ガイドブックは自衛のために見ておいたほうがよいと思います。
2冊メジャーなものと、1冊日本ではあまり知られていない物を紹介します。


地球の歩き方
Lonely Planet
・Bradt


地球の歩き方

言わずと知れたメジャーどころ。
辺境国は情報の正確性に疑問が出ていたり、実際と違ったりしますが、
マダガスカルに関しては不正確だとは感じませんでした。
大体これに書いてあることは信用していいし、質のいい情報が載っていると感じました。
ただ、細かいことはあんまり書いていないとも感じました。


ロンリープラネット

ガイドブックの世界的決定版。
地球の歩き方が「間違ってはいないが細かい情報がない」のに対し、
ロンリープラネットは細かくて正確。ただし写真や図がない。
また、日本由来の〜みたいなものは載ってない。


・Bradt Travel Guide

辺境旅行あるいは一風変わった旅行のガイドブックばかり出している有名どころだそうです。
Bradtシリーズを発行したBradtさんは、マダガスカルが専門なので、
それなりにいろいろなことがマニアックに書いてありました。


ただ、ロンリープラネットが「旅行するときにどこに泊まるか、何を食べるか、どうするか」など、実際的な情報が多いのに対し、
Bradtはバックグラウンド的な情報、この街がどうやってできたか、ここには何がどのようにあるか、などの情報が多いので、使うのには不向きだと感じましたが読み物として面白いです。


ちなみに日本ではあまり知られていないのか、人からBradtの話は聞いたことはありません。
また、日本の本屋では見かけたことがありません。
僕は3年前にベルリンの本屋で買いました。amazonなどで入手可能みたいです。


1.お金

マダガスカルで使われているお金の話をします。

外国人が使えるのは
アリアリ(Ariary)という国内通貨
外貨であるユーロ、米ドル
です。


100Ar = 4円
2650Ar から 2700Ar = 1ユーロ


です。
なお米ドルは使わなかったのでわからないです。
(米ドルを使っている人も見かけませんでしたが、多分可能です。)


アリアリは国内通貨です。
大体の買い物はこれでします。
とにかく桁の多さと物価感覚の違いから、また地元の人向けの物と、観光客向けの物の物価が割と違うために、金銭感覚が養われません。


宿や旅行者向けのレストランなどでは、ユーロや米ドルが使えます。
レートは大体1ユーロ2650から2700です。
1ユーロ2600とか2500とか吹っ掛けられるので、めげずに交渉しましょう。


なお、アリアリ交換ですが、
両替所に行くと、1ユーロで2500Arとかでやられてしまいます。
外貨を買えるような銀行に行くと、とにかく混んでいますが、
きちんと市場価格と手数料で交換できるようです。
市場価格では、1ユーロで2900Arだった気がします。


アリアリから外貨への交換は結構厳しく制限されているので、
使う分だけ交換するのがお勧めです。


参考までに物価を書いておきます。

水1.5l
1500Ar - 2000Ar


ビスケット15枚
1600Ar


ビール
スーパーや市場で買うと1900Ar,
レストランで買うと4000Ar


地方都市のタクシー(ex. Fort Dauphin)
1000Ar

首都のタクシー
近距離4000Ar
中距離7000Ar
空港首都間30000Ar
(最初はみんな10000Ar、空港首都間40000Arと言ってきます。粘りましょう。)


宿

低級
10000Arから25000Ar

中級
30000Arから70000Ar

高級
それ以上。
首都はとにかく高い。


ガイド
雇い方に依るけど、
都市部から自然保護区(多くのマダガスカルの野生動物はここにいる)に行こうとすると
2人で旅行なら車込みで一日180000Ar+ガイド料20000Arとかとか。


二点だけ雑記
・旧通貨であるFMg(マダガスカルフラン)という単位をたまに見かけますが、Arと併記されているので気にすることは全くないです。
・お金の概念は首都と地方で分けた方がいいくらい首都は高いです。
参考までに。




2.言葉


マダガスカルで使われている言葉の話をします。
結論としては


「英語ができない人は日本人のガイドがいるパックツアーに行け。
英語が少しできれば旅行はできるが苦労は多い。
フランス語ができると旅行はもっと楽しい。
だけど値段交渉はフランス語で。」


以下詳細です。


マダガスカル人の庶民が話す母国語はマダガスカル語(Malagasy)です。
義務教育である小学校に行くと、旧宗主国であるフランスの言語フランス語を習います。


なので、庶民にとってフランス語は、日本人にとっての英語と似ているかも。
ごく庶民は知ってはいるがそんなに話せない、
でもまぁ少しは話せるよ、という感じなのが実感です。
フランス語での簡単な意志疎通なら、大抵の人ができます。
彼らは、フランス語が話せることが、自分のインテリジェンスの証、と思っているように感じました。
(参考までに、官僚は日常会話もフランス語で行うようです。)


庶民は英語を全く話しません。
英語を話す人は、観光業に従事する人の一部に限られています。
英語しゃべる人は、お金が貪欲にほしい人です。
あるいは少し知的レベルの高い人が知っている、ぐらいです。
具体的には、後に述べるタクシーブルースという庶民用バスに乗ると、
20人くらい乗っていて、1人話せたらいい方、くらいです。
なお、英語は発音が結構悪いので、ガイドであれば辛抱強く聞きましょう。
道端であれば、辛抱強く聞いてしまうと、日本人は結構ぼられます。

ぼられないようにするには
自信を持って話す。
英語で金の話は極力避ける。あるいは強硬な態度を取る。

この2つが極めて有効です。


日本語は、現地のガイドが「少し知っている」くらいでした。
日本語がしゃべれるガイドは地方ではまずいません。



ということで、まとめると

マダガスカル語 
誰もが話す。


フランス語 
多分そこそこ複雑なことまでフランス語で聞いても答えられる大人は多いと思う。
(ちなみに僕はフランス語はサバイバルに必要な簡単な物を暇なときに調べて覚えていた程度です。)


英語
庶民には通じない。外国人向け観光業に従事している人にしか通じない。

(それゆえ値段の交渉は英語でやることは不利であることが多い)


日本語
多分諦めた方がいい。


です。



なお、数字やお金周りの単語はフランス語で覚えていった方がいいです。
絶対にぼられます。
ジェスチャーでやり取りできている、というのは大間違いです。
Quatre mille ariary!(4000Ar)と言われて一瞬分からずポカンとして10000Arを出したらお釣りが2000Arでした。


英語で値段を言われても、フランス語で確認しなおした方がベターです。
英語の数字を理解していない可能性があります。


最初に自信を持って英語で話しかけて、相手が通じない場合、
「俺が悪いんじゃなくて英語しゃべらないお前が悪いんだしょうがねぇなぁ」
みたいな感じで片言でもフランス語で意志疎通して、
強硬な態度で値段交渉に臨む。


これで初めてまともな値段が出てきます。
日本人はこれくらいしないと本当にぼられます。


長くなりましたので、続きは別の記事に書きます。
マダガスカルに行きたい人のための一般的な情報2